自動車業界の税務ポイント

消費税の簡易課税制度と自動車業界


最近、車関係のイベント毎が続いていて「自動車業界の税務ポイント」カテゴリーのブログ更新ができておりませんで、申し訳ございません。
今回は、私たち税理士でも頭を悩ませることが多い消費税の「簡易課税制度」における「事業区分」について、中古車販売店、自動車整備工場などの自動車業界のケースを例にしてご紹介したいと思います。

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簡易課税制度とは

まず、制度の概要を説明させて頂きます。
日本における消費税制度は、「売上の際にお客様から受け取った消費税」から「仕入や経費の支払いの際に業者さんやお店に支払った消費税」をマイナスして、その差額を納付する仕組みとなっております。
しかし、その課税期間の前々年または前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下であり、「簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書(簡易課税制度選択届出書)」を事前に税務署に提出している事業者は、「仕入や経費の支払いの際に業者さんやお店に支払った消費税」を集計することなく、「売上の際にお客様から受け取った消費税」一定割合を乗じた金額を「仕入や経費の支払いの際に業者さんやお店に支払った消費税」とみなして、消費税の納付税額の計算を簡便的に行うことが認められており、この簡便的な計算方法を「簡易課税制度」と呼びます。

なお、この一定割合というのは「みなし仕入率」と呼ばれ、下記のとおり事業の種類毎に定められており、自動車業界における中古車販売や自動車整備といった事業がいったいどの事業区分に該当するかについてご紹介していきたいと思います。

<簡易課税制度における事業区分とみなし仕入率>
第一種事業(卸売業)   … みなし仕入率: 90%
第二種事業(小売業)   … みなし仕入率: 80%
第三種事業(製造業等)  … みなし仕入率: 70%
第四種事業(その他の事業)… みなし仕入率: 60%
第五種事業(サービス業等)… みなし仕入率: 50%

(注) 平成27年4月1日以後に開始する課税期間から、 簡易課税制度のみなし仕入れ率について、現行の第四種事業のうち、金融業及び保険業を第五種事業とし、そのみなし仕入率を50%(←現行60%)とするとともに、現行の第五種事業のうち、不動産業を第六種事業とし、そのみなし仕入率を40%(←現行50%)とすることとされました。

自動車業界における簡易課税の事業区分

中古車販売の場合

単純に考えますと、業者間での売買であれば「第一種事業(卸売業)」、一般のお客様へ販売する場合には「第二種事業(小売業)」となるので、さほど難しい話ではなさそうはあります。
しかし、消費税法ではこの「卸売業」や「小売業」について、次のように定義しています。

卸売業:
他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業

小売業:
他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で卸売業以外の事業

小売業の定義がやや分かり辛いかもしれませんが、つまりは「他の事業者以外」に対して販売する(=一般のお客様へ販売する)事業ということになります。

ここで着目して頂きたいのが、「その性質、形状を変更しないで」という部分です。

中古車販売業では、下取り車やオークション仕入車などを板金や整備(部品交換)してから店頭販売するといったケースが日常的に行われております。
実は、この板金や整備といった行為のうち、通常の点検整備や清掃・ワックスがけといった行為は「その性質、形状を変更しないで」に該当するのですが、板金塗装やパーツ交換といった行為については「性質及び形状の変更があるもの」となり、「第三種事業(製造業等)」に該当することとなります。
その他、「製造業等」に該当するものを2つほどご紹介しておきます。

・自動車の支給を受けて保冷車等に改造する事業
・自転車の部品を仕入れ自転車を組み立てて販売する事業
(運送の利便のために分解されている部品等を単に組み立てて販売する場合は除く)

なお、取付費を別途請求する場合の取付費は「第五種事業(サービス業等)」に該当する訳ですが、取付費が無償(サービス)であると認められる場合は全体が「卸売業」または「小売業」として取り扱われることになります。

自動車整備の場合

自動車の整備や修理の売上は「第五種事業(サービス業等)」に該当します。
ちなみに整備や修理に伴う部品代金を区分して請求書に記載していたとしても、その部品代金も含めて全体が「サービス業等」該当するので注意が必要です。
一方、整備や修理に伴ったものではなく、タイヤ交換やオイル交換といった商品の販売と工賃を合わせて請求する様な場合には、商品の販売部分は「第一種事業(卸売業)」または「第二種事業(小売業)」に該当し、工賃の部分は「サービス業等」に該当します。
さらにさらに、「交換工賃込み」としている場合には、その全体が「サービス業」に該当してしまう取り扱いもあります。

有利不利の判定してますか?

自動車業界における簡易課税制度(事業区分)についてご紹介して参りましたが、この記事を書いている私自身も混乱しそうなくらい様々な取扱いが存在します。
結局は、売上の種類に応じて個別に判断することが求められますので、日々の経理処理の中で疑問に思うことや分からないことなどがございましたら、気軽にお尋ね下さい。
そして最後に1つだけご確認下さい。
冒頭の簡易課税制度の概要のところで「簡便的な計算方法が認められている」とご紹介しましたが、これには自らが「簡易課税制度」を選択するという意思表示を税務署にする必要があります。
そして、この「簡易課税制度」という計算方法は、単に計算方法が簡便的であるだけでなく、計算される納付すべき消費税が少なくなるケースが多いのです。
私たち税理士の仕事のひとつに「お客様に無駄な税金を払わせないこと」がございます。
ここ最近、簡易課税制度を選択した方が税金の納付を少なくすることができるか否かの比較検討をしていない事業者の方がいらっしゃいましたら、今すぐご連絡下さい。
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コメント

  1. ワン より:

    はじめまして

    個人事業主にて自動車販売&自動車整備を行なっております。
    自分で消費税を計算して納めておりますが、不安が多くいろいろ調べていまして、こちらのサイトに辿り着きました。

    是非、簡易課税と本則課税のどちらが適しているのか判断して頂きたいのですがお願い出来ますでしょうか?

    突然のご連絡で失礼致します。
    よろしくお願い致します。

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