自動車業界の税務ポイント

賃上げ税制は要件が緩すぎた!?現行制度と改正の行方(令和6年度・2024年度税制改正)


一定の給与アップ(賃上げ)をした企業の法人税を減税するいわゆる「賃上げ促進税制」について、財務省が「減税を受けるための要件が緩すぎた」と分析しているとか何とか…というニュースが出ておりましたが、改めて現行制度のおさらいと、今後の改正の行方について確認しておきたいと思います。

賃上げ促進税制(現行)

中小企業の場合

雇用者全体の給与総額を前年度と比べて「1.5%以上増加」させると、その「増加分の15%」の法人税が減税されます。

さらに、

給与総額を「2.5%以上増加」させると、法人税の減税額がその「増加分の30%」に拡充されます。

さらにさらに、

セミナーなどの研修費(教育訓練費)を前年度と比べて「10%以上増加」させると、控除率がさらに「10%上積み」されます。

つまり、

フルで要件を満たすと、最大「給与増加分の40%」の法人税が減税されることになります。

ただし、

減税の上限は「適用年度の法人税×20%」と定められているので、そもそも一定額以上の法人税が発生している必要があります。

大企業の場合

継続雇用者の給与総額を前年度と比べて「3%以上増加」させると、「雇用者全体の給与増加分の15%」の法人税が減税されます。

さらに、

継続雇用者の給与総額を「4%以上増加」させると、法人税の減税額が「雇用者全体の給与増加分の25%」に拡充されます。

さらにさらに、

セミナーなどの研修費(教育訓練費)を前年度と比べて「20%以上増加」させると、控除率がさらに「5%上積み」されます。

つまり、

フルで要件を満たすと、最大「給与増加分の30%」の法人税が減税されることになります。

ただし、中小企業と同じく、減税の上限は「適用年度の法人税×20%」と定められているので、一定額以上の法人税が発生している必要があります。

※資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上の企業については、他に「従業員への還元や取引先への配慮の方針を公表していること」が適用要件となっています。

改正の方向性

現行制度の賃上げ促進税制は、中小企業向け・大企業向け共に2024年3月をもって期限切れとなります。

もちろん、そのまま制度が無くなるということは考え難く、一定の改正(拡充措置)を加えて継続(延長措置)することが予想されます。

そして今後の改正の行方として議論されている大きなポイントは次の3つです。

翌年度以降に繰り越せても良いんじゃね?

賃上げ促進税制の使い勝手の悪さの要因の1つに「繰越不可」という点があります。

せっかく賃上げを行って、税額控除額が発生しても前述の「適用年度の法人税×20%」という上限のせいで満額控除が取れず、さらに控除できなかった部分を翌年度以降に繰り越すことができないのです。

この点を改善すべく、「中小企業向けについては、控除額の上限を超えた分を翌年度以降10年間繰り越すことができるようにする」方向で議論されています。

大企業はもうちょっと賃上げを実現しても良いんじゃね?

現行制度では、大企業の賃上げ要件は「3%以上増加(上乗せは4%以上増加)」となっていますが、さらに賃上げを実現した場合に、もっともっと減税できる仕組みがあれば、さらなる賃上げ促進に繋がるのではと見込まれています。

そこで、「大企業向けについては、5%以上の賃上げを達成した場合には、さらに減税措置を拡大する」方向で議論されています。

子育てや女性活躍を応援することは良いことじゃね?

「子育てや女性活躍に積極的な企業には税額控除額の上乗せを行う」方向で議論されています。

まぁ、税額控除を受けるために賃上げを行う!というのは本末転倒ですが、この賃上げ促進税制が、賃上げをしたいが金銭的負担が心配で…という企業の後押しになることを願っております。

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