自動車業界の税務ポイント

第35回:値引きの方法によって経理処理が違うってウソ?ホント?


値引きの方法によって経理処理が違うって…

3つの値引きパターン

中古車販売店での商談において日常的に行われている「値引き」という行為ですが、今回は実務現場で採用されることが多い3つの値引きパターンについて、その経理処理方法をご紹介します。

特定の項目を減額

1つ目は特定の項目を減額する値引き方法です。例えば、車庫証明の代行費用などをサービス(減額または無償化)する場合などがこれに当たります。このケースでは、特定の項目が減額または無償化された注文書のとおりに「手数料売上高」などの科目を減額または計上しないだけで値引きに係る経理処理は完了します。このパターンの値引きの場合は、特に難しい処理はありません。

支払総額からの減額

2つ目は支払総額から一定額を減額する値引き方法です。例えば、総支払額がキリの良い数字となるよう、端数分をカットする場合などがこれに当たります。このケースでは、どの項目から減額したのかが明確ではありませんので、車両本体価格からの値引きと考えるのが一般的です。注文書を入力する際には、本来の車両本体価格からカットした金額を控除した額で「車両売上高」を計上しましょう。

下取り価格を高くする

3つ目は下取り車の査定額を高くすることによって値引きをする方法です。本体値引きは行わないといった店舗方針だったり、セールストークのひとつだったりと理由は様々ですが、相場より少し高い金額での下取りが行われることになります。このケースでは、下取り車の仕入価格が大きくなるだけで、「値引き」という経理処理は発生しませんので、「処理なし」となる訳ですが、下取り価格へ上乗せ額があまりにも大きい場合には注意が必要です。【時価より高い下取り】
前述の3つ目のパターンで値引き相当額を下取り価格に上乗せする場合、もしその上乗せ後の下取り価格が「時価」を超えるときは、その超える部分の金額を販売車両の値引きとして処理しなければならないケースがあります。ここでいう「時価」とは、下取り相場ではなく、世間相場による売価を指しますので、特殊な事情がない限り時価を超える下取りは通常起こり得ませんが、商談の際は頭の片隅に置いておくと良いでしょう。

処理は二の次

今回は細かい経理処理について触れましたが、中古車販売店の最大の業務は「車を売ること」です。売った後の経理処理や税務処理に囚われず、まずはお客様との商談をスムーズに進めることを最優先して下さい。お客様との商談の結果、どんなに特殊な取引になったとしても、会計や税務の原則に基づいて1つ1つ冷静に考えれば、おのずと正しい処理方法は見えてくるものです。

コラム説明

この記事は、自動車流通新聞(グーネット自動車流通)さんで連載しているコラムの内容を転載したものです。
自動車販売店の経営者や実務担当者が抱く経営・経理・税金に関する様々な疑問について、自動車業界専門の税理士が解説しておりますので、他のコラムをご覧になりたい方は、下記URLより一覧でご確認頂けます。

中古車販売店「経営実務」のウソ?ホント?
http://www.mn-tax.jp/garage/goonet


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