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第53回:税務調査での指摘には素直に応じて修正申告をした方が良いってウソ?ホント?


税務調査での指摘には素直に応じて修正申告をした方が良いって…

税務調査の流れ

税務調査には「強制調査」と「任意調査」の2つの種類があり、前者は脱税の疑いがある場合に強制的に行われる調査であり、この記事を読んで下さっている皆様が世話になることはないでしょう。

つまり、数年に1度のペースで一般的に行われている税務調査は、後者の「任意調査」となります。

任意調査では、納税者に対して調査の日時や場所などが事前通知で指定され、調査当日は、事業概要の説明を求められた後、調査官からの質問に回答したり、求められた帳簿書類を提示したりします。

また、状況によっては職員が帳簿書類を預かったり、取引先の調査を行ったりすることもあります。

そして、最後に調査結果について説明を受け、申告内容に誤りが認められると指摘があった部分について申告内容の修正を要請されます。

税務調査の終わらせ方

税務調査で申告内容に誤りが認められると指摘があった場合、税務調査を終わらせる法的方法としては「修正申告」と「更正」という2つがあります。

世間一般的には、税務調査は、調査官の指摘に納得したうえで、自ら誤りを認めて修正申告書を提出することで終了するのが当然と思われていますが、調査官の指摘に納得ができない場合には、無理に修正申告書を提出する必要はありません。

その場合には、税務署側から指摘事項に対する追徴課税を求める「更正」という処分を受けることとなります。

更正は悪いことではない

更正というのは、何となく税務署から裁きを受けるように感じてしまいますが、修正申告を行わずに更正を受けたとしても、修正申告を行う場合と比較して追徴税額が増えたり、その後に税務署から嫌がらせを受けるようなことはありません。

それでは修正申告と更正の違いは何なのか、それは後から「不服申立て」ができるかどうかです。

不服申立てというのは、税務署からの処分に納得できない場合、裁判の前段階として税務署や国税不服審判所に訴えを起こすことをいいます。

修正申告は“自ら誤りを認めて”提出するものなので、後から不服申立てをすることができませんが、更正の場合は税務署から処分を受ける形となるため、処分内容に納得できない場合、不服申立てすることができるのです。

税務署は更正を嫌がる

更正の場合には、追徴税額などは原則として修正申告と同じであるにも関わらず、不服申立ての権利が残るという意味では、納税者の立場からは税務調査は更正で終わらせた方が有利といえます。

しかし、その反対に税務署(調査官)は、なるべく修正申告で税務調査を終わらせたいと考えており、その主な理由は次のとおりです。

(1)不服申立てされたくない

税務署側から更正をするということは、納税者が税務調査での指摘事項に納得していないということになるので、かなりの確率で「不服申立て」が行われることとなります。

そうなった場合、また別の調査官が再調査を行うことになるので、税務署側からすると仕事が増えてしまうのです。

(2)手続きが面倒

納税者側から修正申告書を提出してもらえれば、基本的に調査官が上司の決裁を得ることによって税務署内の手続きが終了しますが、更正の場合にはそうはいきません。

税務署長というその税務署の中で一番偉い人の決済が必要になるなど、税務署内の手続きが非常に面倒になるのです。

(3)指摘理由が曖昧

税法の解釈というのは捉え方によって様々であるため、税務調査における指摘理由については、その根拠が曖昧であるケースも少なくありません。

このような場合、納税者側から修正申告書を提出してもらえれば根拠が曖昧でも問題はないのですが、更正となると、根拠を法令等で明確にしなければならないため、とても難しい業務となってしまうのです。

修正申告のメリット

ここまでの内容から、納税者の立場では修正申告書を提出せずに、税務署側から更正をしてもらった方が有利ということがお分かり頂けると思います。

しかし、実務上の税務調査は、その殆どが調査官からの要請に応じる形で修正申告を提出することで終了しています。

その理由は、修正申告で税務調査を終わらせることに一定のメリットがあるからであって、その主なメリットは「交渉」と「早期終了」の2つです。

交渉に関する詳しい解説は割愛しますが、前述のとおり調査官としては修正申告書を提出して欲しい訳ですから、実務上、指摘事項に関する一定の交渉は行われています。

また、指摘事項について完全には納得できないものであったとしても、ある程度妥協できる内容だったり、金額的に大したことのない内容であれば、税務調査を早期に終了させるためにも、修正申告書を提出する方が望ましいと言えます。

最後に

税務調査での指摘事項に納得ができていないにも関わらず修正申告書を提出してしまうと、それは自ら誤りを認めたことになるので、もう後戻りすることはできません。

このことを認識したうえで、何を優先し、どのような形で税務調査を終わらせるのか、あまり意固地にならないように気を付けつつ臨機応変に対応して頂ければと思います。

コラム説明

この記事は、自動車流通新聞(グーネット自動車流通)さんで連載しているコラムの内容を転載したものです。

自動車販売店の経営者や実務担当者が抱く経営・経理・税金に関する様々な疑問について、自動車業界専門の税理士が解説しておりますので、他のコラムをご覧になりたい方は、下記URLより一覧でご確認頂けます。

中古車販売店「経営実務」のウソ?ホント?
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