税金雑学

町内会やPTAが主催する講演会の講演料(講師報酬)は所得税の源泉徴収が必要か?


先日、会計業務を受託している町内会さんからのご依頼で、税金に関する講演会の講師を務めさせて頂きました。

決して安くはない報酬を頂いた訳ですが、こちらから提示した金額の額面通り、特に源泉徴収などされずにお振込を頂きました。

税務顧問をしている訳ではないので、私の立場からとやかく言うものではありませんが、一般論として町内会やPTAなどが講演会を主催した場合の講演料(講師報酬)について、その取扱いをご紹介したいと思います。

町内会やPTAは法人扱い!?

町内会やPTAなどは、その規模にかかわらず「人格のない社団等」とよばれ、税法上は法人とみなされます。

よって、収益事業を行う場合には、所轄の税務署に対して「収益事業開始届出書」を提出して、法人税の申告を行う必要があるのです。

ここまでお読み頂いて、

えっ!?

と焦っている方もいらっしゃると思いますが、ご安心下さい。

町内会やPTAが会員の方から徴収する会費収入は事業に関係するものではなく、またイベントの出店などは継続的に行うものではないので収益事業に該当しません。

強いて収益事業の例を挙げるとすると…

・保有物件の一部を継続的に賃貸している

・外部から何らかの業務を受託し、継続的な収入がある

といった場合です。

町内会やPTAと源泉徴収義務

源泉徴収義務者とは?

会社や個人が、人を雇って給与を支払ったり、税理士、弁護士、司法書士などに報酬を支払ったりする場合には、その支払の都度支払金額に応じた所得税(+復興特別所得税、以下同様)を差し引くことになっています。

そして、差し引いた所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。

この所得税を差し引いて、国に納める義務のある者を「源泉徴収義務者」といいます。

町内会やPTAは源泉徴収義務者?

そして、源泉徴収義務者となる者は、会社や個人だけではありません。

給与などの支払をする学校や官公庁、人格のない社団・財団なども源泉徴収義務者になります。

ただし、常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与を支払っている個人は、その支払う給与や退職金について源泉徴収をする必要はありません。

また、給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人が支払う弁護士報酬などの報酬・料金については、源泉徴収をする必要はありません。

例えば、給与所得者が確定申告などをするために税理士に報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はは無いということです。

つまり…

町内会やPTAも「源泉徴収義務者」ということになります。

講演会の講演料(講師報酬)は源泉徴収の対象か?

作家に原稿料を支払うときや大学教授などに講演料を支払うときは、報酬・料金等として所得税を源泉徴収しなければなりません。

源泉徴収の対象となる報酬・料金等に含まれるもの、含まれないもの

1.謝金、取材費、調査費、車代などの名目で支払をする場合がありますが、これらの実態が原稿料や講演料と同じ場合には、すべて源泉徴収の対象になります。

2.旅費や宿泊費などの支払も原則的には報酬・料金等に含まれます。しかし、通常必要な範囲の金額で、報酬・料金等の支払者が直接ホテルや旅行会社等に支払った場合は、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっています。

3.懸賞応募作品などの入選者に対する賞金や新聞、雑誌などの投稿欄への投稿の謝金などは、原則として原稿料に含まれますが、一人に対して支払う賞金や謝金の金額が、1回50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

4.原稿料には、試験問題の出題料や答案の採点料などは含まれません。

5.報酬・料金等の額の中に消費税(+地方消費税の額、以下同様)が含まれている場合は、原則として、消費税の額を含めた金額を源泉徴収の対象としますが、請求書等において報酬・料金等の額と消費税の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。

つまり…

名目如何に関わらず、講演会の講演料(講師報酬)は源泉徴収の対象になります。

あと、

だったら商品券にすればええやん!

と言い出す人が必ず1人はいますが、

商品券なども現金同等物として源泉徴収の対象になります。

わざわざ講演に来て頂いた講師の方が

講演を頼まれて、

商品券貰って、

税金は現金で納める。

という最悪のパターンにならないよう、我が国では謝礼は現金で渡す慣習があるのですね。

私は「古き良き慣習」が大嫌いですが、これだけは納得です。

とまぁ、色々と書いてきましたが、結論としては、よほど頻繁に講演会を主催しない限り、よほど高額な講演料を支払わない限り、税務署から指摘や指導を受けるまでは、従前通りの処理を継続すれば問題ないと思います。

町内会にせよ、PTAにせよ、決して長くない任期で、ボランティアで行っている人が殆どだと思いますので、当たり障りなく任期を満了すれば良いと、個人的には思うのです。

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コメント

  1. poteto より:

    分かり易いご説明いただき有難うございます。任意団体で講演会で源泉徴収した謝礼を支払い、税務署へ納税しようと思います。講演料は皆から集金したお金で払いました。納税の際の支払者は、どうすればよいでしょうか?
    会計担当の自分名での納税でも良いでしょうか、皆のお金も混じっていますので悩みます。

    1. sakai より:

      poteto様

      コメントありがとうございます。
      講演料(謝礼)に係る源泉徴収義務は支払者(ご所属の任意団体)にございますので、税務署への納付も当該任意団体の名前で行います。

      任意団体としての届出(給与支払事務所等の開設届出)や納付書の入手方法などについては、所轄の税務署にお問い合わせされると良いと思います。

      https://www.nta.go.jp/information/attention/data/h22/sozoku_zoyo/zeimusho.htm

      酒井

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