自動車業界の税務ポイント

中古車販売の注文書に収入印紙を貼る必要はあるのか(自動車・バイク業界と印紙税)


「これって収入印紙を貼らないとダメですか?」

税理士という仕事をしておりますと、この様な質問を良く受けます。

収入印紙を貼る必要があるか否かは、契約書や注文書のタイトルではなく、そこに書かれている内容から個別に判断する必要があるため、昨年出版した書籍「いまさら人に聞けない「中古車販売業」の経営・会計・税務」の中では、敢えて記載項目からは外しました。

しかし、中古車販売業の実務に携わる方からのご質問が多い論点ではありますので、ここで整理して記載させて頂くことにします。


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印紙税とは

印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。この課税文書とは、次の三つのすべてに当てはまる文書をいいます。
(1) 印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証明されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。

課税文書に該当するかどうかはその文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。

つまり、「こういうことが書いている文書には○○円の収入印紙を貼りなさい」と法律で決まっていて、そのような文書を作成する場合には、収入印紙を貼らないと税務署さんに怒られてしまうということです。

クルマ屋さん、バイク屋さんと印紙税

具体的にどのような場合に収入印紙を貼る必要があるのかについて、ここではクルマ屋さんやバイク屋さんに関連する項目をピックアップしてご紹介したいと思います。

車両売買の注文書(売買契約書)

お客様にクルマやバイクを販売する際には、通常「注文書(または売買契約書)」を締結しますが、皆様は収入印紙を貼っていますか?

実は、この物品(クルマやバイクも含む)売買に関する注文請書というのは、〝原則として〟収入印紙を貼る必要はありません!

長年にわたって中古車販売業を営んでいる方の中には、「昔は貼っていた気がするなぁ…」という記憶がある方もいらっしゃるかと思いますが、実は平成元年3月までは印紙を貼る必要があったものが、平成元年4月以降は印紙を貼らなくてもよくなったのです。

原則と例外

先ほどの注文書に係る収入印紙に関する記載の中で、〝原則として〟という表現を使用させて頂きました。

そうなのです。

原則があれば、例外もあるのです。

注文書の記載内容が「加工修理といった請負など」を含んでいない、単なるクルマ・バイクの売買に関するものだけであれば、原則どおり印紙を貼る必要はありません。

しかし、「加工修理といった請負など」を含んでいる場合には、物品売買の契約と同時に、請負の契約も成立していることになるので、このようなケースでは、収入印紙を貼る必要があるのです。

具体的には、①加工や塗装を要する業務や、カスタム制作などの項目が記載されている場合や、②付属品(オプション品)がある場合で「取付工賃」が別途記載されている場合などが該当します。

物品の販売ではなく、何かを請け負った場合には印紙が必要になるという訳ですね。

ちなみに、添付する印紙の額は、請け負った金額が1万円未満の場合には非課税(0円)1万円以上で100万円までは200円となっています。

リサイクル預託金と印紙税

中古車の売買が行われる際には、車両代金に加えて、リサイクル預託金相当額の収受が行われるのが一般的です。

リサイクル預託金の仕組みについては、コチラの記事をご参考下さい。
2016.06.06「リサイクル料金(預託金)の仕組みと中古車販売店における処理」

この場合の「リサイクル預託金」は、〝そのクルマを新車で買った人が資金管理法人(リサイクルセンター)に預けたお金〟という扱いになり、「金銭債権」と考えることもできます。

ただ、中古車売買の実務上、「リサイクル預託金という金銭債権を売買している」という意思は売り手側、買い手側の双方には無く、リサイクル預託金“相当額”を車両代金の一部として収受しているとも考えられます。

いずれにしても、このリサイクル預託金という「金銭債権の譲渡」が印紙税の対象になるケースがあることは事実です。

つまり、「クルマを売ります」という物品売買の契約だけなら収入印紙を貼る必要はないのですが、「リサイクル預託金」という金銭債権も一緒に譲渡したと判断された場合には、収入印紙を貼る必要があるという訳です。

中古車販売の場合、注文書にリサイクル預託金の金額を記載するケースが殆どだと思いますが、これが「金銭債権の譲渡」に該当するか否かは、所轄税務署の担当官の判断に依るところとなりますので、詳細は顧問税理士にご確認下さい。

ちなみに、添付する印紙の額は、リサイクル預託金の額が1万円未満の場合には非課税(0円)1万円以上の場合は200円となっています。

まとめ:中古車販売時の注文書に収入印紙を貼る必要がある場合

これまでご説明してきた内容を簡単にまとめますと、中古車販売時の注文書に収入印紙を貼る必要がある場合は、次の2つということになります。

①車両販売と一緒に、業務請負がある場合で、その金額が1万円以上の場合

②リサイクル預託金の記載額が1万円以上の場合

領収書(領収証)と印紙税

お客様から車両代金や整備代金を受け取った場合に発行する領収書には、その記載金額に応じた収入印紙を添付する必要があります。

これは、お金を受け取った事実を証するために作成されたもの全てが対象となります。

つまり、名称が「領収書」となっている場合だけでなく、「受取書」、「レシート」、「預り書」はもちろん、受取事実を証するために請求書や納品書などに「代済」、「相済」とか「了」などと記入したものなども含まれますので注意が必要です。

3万円以上が5万円以上になっています

少し前までは、領収書の印紙といえば「3万円以上」というイメージが強かったかと思いますが、平成26年4月1日より領収書の印紙税の非課税範囲が改正され、受領金額が5万円未満の場合には、印紙不要となりました。

ちなみに、領収書に係る印紙税の金額一覧は下記のとおりです。

・5万円以上 100万円以下
 →200円
・100万円超  200万円以下
 → 400円
・200万円超  300万円以下
 →600円
・300万円超  500万円以下
 →1,000円
(500万円超は記載省略)

おまけ:印紙を貼らないとどうなるの?

冒頭に、「収入印紙を貼らないと税務署さんに怒られてしまう」と記載しましたが、本来貼るべき収入印紙をきちんと貼らなかった場合には、具体的にどのような罰則があるのでしょうか?

倍返しならぬ3倍返し

税務調査などが行われ、本来貼るべき収入印紙を貼っていなかったり、貼る金額が足りていなかったことが発覚した場合には、「本来貼るべき印紙の額」に加えて「その印紙の額×2倍」の金額が過怠税として上乗せされます。

つまり、本来貼るべき印紙の額の3倍の印紙税を払わなければならないということです。

ただし、貼り忘れてしまったことに自分で気付いて、税務署に自己申告した場合などには、「本来貼るべき印紙の額」と「その印紙の額×10%」で済ませてもらえるという救済規定があります。

収入印紙は貼るだけではダメです

収入印紙を貼り付けたところで安心してしまい、消印することを忘れてしまった場合…。

この様な場合にも、ペナルティ規定があり、消印を忘れてしまった収入印紙の金額と同額の過怠税が徴収されます。

収入印紙を貼った後には、必ず消印することを習慣付けるようにしましょう。

 

収入印紙をわざと(故意に)貼らなかった場合

収入印紙を貼る必要があるにも関わらず、 故意に貼らなかった場合、税法上は最も厳しいペナルティが科されます。

一年以下の懲役若しくは20万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

恐ろしいですね。


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